2013年10月17日(木)10時~12時 朝霞市ゆめぱれすにて、陰山英男氏の講演会『子どもの幸せのために親ができること~やる気が伸びる7つの習慣』が開催されました。
922名収容できる大ホールが満席になりそうな大盛況で、近隣市からもわざわざ来られた方もいらっしゃいました。
陰山先生の講演は、最初から最後まで、関西ノリの笑いが溢れる楽しい語り口で、わかりやすいグラフや要点をまとめたスライドを使っての充実した内容でした。
『子どもの幸せのために親ができること~やる気が伸びる7つの習慣』
【習慣①】しっかり睡眠
【習慣②】がっつり食事
【習慣③】テレビは1時間程度
【習慣④】心と頭の栄養、読書
【習慣⑤】子供を伸ばす家という環境
【習慣⑥】脳を速く動かす学習習慣~正しい百ます計算のやり方
【習慣⑦】集中的な漢字学習
本当に役に立つ素晴らしい内容でしたので、聴けなかった皆様にも是非お伝えしたいと、備忘録も兼ねて内容をまとめさせていただきました。聞き間違い等あるかもしれませんが、ご容赦くださいませ。
●一番大切なのは「集中」~長時間勉強のウソ
「勉強時間は長い方がいい」というのはウソです。長くなれば勉強ができなくなります。「学力向上に時間がかかるというのはウソなのです。」「わかった!」という一瞬が向上の瞬間です。
勉強とは「集中する練習」です。「子どもたちを集中させてください。以上!」人間が「集中する営み」をトレーニングするために勉強というものがあるのです。
「ダラダラ勉強するくらいなら外へ行って遊んでおいで!」というのが正しいのです。
●正しい集中のセオリー
【正しい集中のセオリー】
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◆緊張は集中を妨げる
◆リラックスこそが集中の基本
◆安心安全がリラックスの土台
◆リラックスの基本は親の笑顔
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「集中」すると脳が活発に動きますが、子どもを脅して緊張させると集中を妨げることになります。
「親の笑顔」に比例して子どもは伸びるのです。
オリンピックの選手は、最近のコメントで「オリンピックを楽しんで来ます!」と言うが、充分な練習ができているので、リラックスして楽しんでメダルを受け取りに行っている。一番重要なのは、親の笑顔。選手の親は徹底してポジティブな表現をしている。
子どもの勉強に当てはめると、充分なテスト準備ができているので、テストを楽しみにできる状態。
お母さんがにこやかでいることが一番大切です。
お父さんは慣れない育児に無理して関わり、失敗してお母さんを怒らせてしまうくらいなら、「お母さんが笑顔でいられるように」家事を手伝ってあげればいい。もちろん、参加したいお父さんはどんどん参加してもらえばいいのですが(笑)
スポーツでも、コーチや監督が笑顔のチームが勝てるのです。
【習慣①】しっかり睡眠
不登校が増え始めた年は、体力低下が始まった年と一致しています。それは校内暴力が増え始めた、昭和56年頃からなのです。高度成長期後の当時は、ちょうど親が深夜帰りになって行った頃です。
夜8時から9時に眠る子の成績が一番よいです。眠る時間が遅くなるほど成績は下がっていく。
成長ホルモンは夜10時~ピークは12時頃。成長ホルモンはお母さんのダイエットにも良いのです。それを覆すのが深夜帰りのお父さん(笑)更に、情緒を安定させるメラトニンも夜10時から1時頃がピークと言われています。つまり、成長にも、心の安定にも10時までには熟睡している必要があるのです。
東大は「世帯の年収が400万円以下の学生に対して授業料全額免除を行っている」ってご存知ですか?東大のホームページを見てください。ちゃんと書いてありますから。
東大生の20%は世帯年収450万円以下だと言われています。日本で低所得者層に一番優しい大学は東大なのですよ。
東大は生活習慣を壊して脳がヘトヘトになっている生徒を求めていません。東大は健全な脳みそがほしいのです。11時、12時まで勉強している東大生、京大生はいません。朝早く起きて勉強している。
早く帰って寝かせることが重要なのです。
【習慣②】がっつり食事
食事で学力が決まります。食品の種類が少ないと成績が下がるのです。
食品数の多さが脳のパワーを高めるのです。1週間に食品70品目ダブりなし!できるものならやってみてください(笑)
200m走と週間摂取品目数との関係を示すグラフがあります。
朝食は遅刻してでも食べさせるようにしてください。
【習慣③】テレビは1時間程度
テレビを見すぎることにより、寝なくなる、対話が無くなる、生活習慣が乱れる、これが問題なのです。
テレビを全く見ないのがいいのではなく、見すぎるのが問題。テレビも見る、勉強もする、早く寝るというように、データでは、テレビを1時間程度見ている子の成績が一番いいのです。
世界で最も勉強時間が短い国(最下位)は日本です。そして世界で最もテレビを見る時間が長い国(1位)は日本なのです。学力低下の原因は明らかに長時間テレビをみることにあります。
荒れる子どもテレビの見過ぎが原因です。テレビを見る時間を減らさなければ、対策のために学校で何をやっても無理なのです。
【習慣④】心と頭の栄養、読書
読書は脳のトレーニングになるので、知能指数が上がって来ます。国語だけでなく、算数も上がってくる。
図書館へは家族全員で行って、借りられる数を何十冊か皆で借りてきて、家族文庫を創ればいい。
子ども達が本を取り出しやすいような本棚の配置がいい。あるご家庭はトイレの前に小さな本棚を置いたところ、子どもの目に本が入るようになり、本を読むことが増えたそうです。
オススメの本を背表紙ではなく、本屋さんのように表紙が見えるように配置するなど、環境づくりが大切。
「本を読みなさい!」と言っても効果はありません。
【習慣⑤】子供を伸ばす家という環境
陰山英男とセキスイハイムが提携して「かげやまモデル」という住宅モデルを提案しているのですが、2000件を越えるヒット商品になりました。
かげやまモデルとは、セキスイハイムが隂山英男先生とのコラボレーションによって子どもたちの学力向上ややる気、自立心を育む住まい環境を構築し、09’年より子育て住宅の在り方をより具体的形にした住まいです。
◆リビングに勉強が楽しくなるカウンターデスクを設置
・小学校低学年までは、子供と一緒にいる時間を長く取る。
・横長机を窓側に設置し、開放感を演出。
・学校から帰宅して、窓の景色でほっとでき、勉強でもしようかという気持ちになる。
◆子供の様子を斜め後ろから見守る
・困っている気配を感じたら声をかけるようにする。
・ダイニングテーブルで正面に座ると緊張してリラックスできない。
・お母さんが気になって注意し始め、怒鳴りはじめることがないよう注意。
◆時計が見やすい位置にあるのが重要
・賢い子供は時間の感覚がある。
・集中とはある一定時間にどれくらい量をこなせたか
・学校の時計も、先生と生徒の両方が見やすい位置に
【習慣⑥】脳を速く動かす学習習慣~正しい百ます計算のやり方
毎日同じ百ます計算をさせると、タイムが上がりやすいのです。毎日タイムを計り、記録し、褒める。そして意欲を持たせる。この「成功体験」が大切です。
毎日、できる限り同じ時間にやらせることで、学習習慣をつける。三人東大にいれた家庭では、晩御飯の時間をずっと変えなかったそうです。
「集中」が脳に与える負荷が重要なのです。
学校では努力と根性が大切と教えられますが、実社会は結果がすべてです。努力と根性だけを信じてきた子は就職もできなかったりします。
「要領よくやる」ことが大切なのです。
簡単なことを高速で繰り返すことが脳のトレーニングになります。難しいことをじっくり考えているとき、脳はあまり動いていません。単純なことがいい。反復の高速化が脳を鍛えるのです。脳が汗をかくような状態です。
教材を間違えると、集中力が切れて、かえってアホになる場合があります。
そろばん、公文、百ます計算の原理は同じです。
注)聴講者が百ます計算の体験をした後、余りのある割り算を2分以内でという制限付きで行ないました。できた人に立ってもらった後、「そろばんをやっていた人」と質問すると、ほとんどの方がそろばん経験者でした。「そろばん」「公文」の経験者か、まれに「計算オタク」「先生」というケースもあります、ということでした。
繰り返し学習、反復学習の重要性。
「さっとできるまでやる」「ようやくできたはスタートライン」
【習慣⑦】集中的な漢字学習
1年分の漢字を1度に覚えましょう。漢字はイメージトレーニングになります。漢字テストで80点取れれば、全てのテストで点が上がります。
4月の始業式から漢字だけの勉強をする。
【陰山先生の漢字練習方法】
(1)1年分の漢字が使われている文章を読ませる。
(2)1つ1つの漢字を覚える。
(3)漢字テストをする。(その1年で習う漢字のみ)
(4)1年で習う漢字の熟語を覚える。
●まとめ
いろんなことができない子には計算と漢字だけをやらせる。
子どもの学習には、必ずゴールを設定する。早く終わった子に追加の勉強を出すのは絶対に駄目。そういうことをするとダラダラを学んでします。早く終わらせる子に育てる。
学力向上は長時間かけてはいけない。短期集中!
脳力は短期間に伸びる。最下位の学校が3年間でトップの学校になれる。
「わからないと思った瞬間」から「わかったと思った瞬間」までの時間が短ければ短いほどいい。だから、授業がわからないと思ったら先生にすぐ質問に行く。
ハウツーではなく、「なぜ?」が重要。
親、教師、子ども達の笑顔のうちに。
●質疑応答
【Q1】小6と中、二人の男の子。リビング学習から子ども部屋に移動する場合、一緒に遊んでしまうので、別々の部屋にした方がいいのか、一緒の部屋にした方がいいのか、どうでしょう?
【A1】思春期もあるので、別々の部屋にした方がいいと思う。ただし、家族全員で勉強するほうがよいという家庭はそれでもOK。色々試してみてください。
【Q2】中1の娘が部活から帰って疲れて寝てしまうのですが、勉強する前に寝たほうがいいのか、先に勉強させた方がいいのかどうでしょう?
【A2】中途半端は眠りは絶対に駄目。睡眠はぶつ切りにしない。睡眠習慣が狂ってしまいます。学習を朝にすることをオススメします。朝を制する人間がビジネスを制するとも言われています。時間は短くてもいいので、朝型の勉強に切り替えてください。
【Q3】3歳の子どもにできることは?
【A3】小学校就学前の子ども達に必要なのは、「集中する時間」です。それは勉強である必要はなく、集中して絵を描いたり、集中して友達と遊んだり、何かに没頭する経験をさせてください。私は自然な形がいいと思っています。
●追記
【追記】ブログを書いた後、思い出したことを追記します。
簡単な同じ計算を反復すると、次に新しい計算問題をやらせたら、
速くできるようになっている。一度できたからと次の新しい問題に移ると、できないことが多い。これは「ようやくできた」段階を「できた」と勘違いしてしまうため。「さっとできるようになる」まで繰り返すことが大切。
「習慣」とは、「努力の無意識化」虫歯にならないためにおこなう歯磨きは毎回理由を考えながらしない。「努力が当たり前になる」これが「習慣」テレビを無意識に見続けるのは「アホになる習慣」
土曜授業はやめた方がいい。疲れて休む時間が減って、疲れ果た脳で土曜授業を受けても意味が無い。
陰山先生の講演は「集中」に始まり、「集中」に終わりました。子ども達が「集中」できる生活習慣を創ること、笑顔でリラックスさせてあげることは、今すぐ親ができることのようですね。