2020年11月2日「明治神宮鎮座百年祭」に関する写真とブログを文末に追加しました。
◆映画『羊と鋼の森』
音楽の大学に通う長女に勧められ、映画『羊と鋼の森』を観てきました。
子供と一緒に観るファミリー向け映画も楽しかったけれど、次女が中学生になってから、主人や友人と映画を観に行く機会が増え、20年近く観ていなかった大人の映画を観に行けるのは本当に嬉しいことです。
『羊と鋼の森』は、調律師が奏でるピアノの音に森の景色を感じた主人公が調律師の道を歩んで行く物語。2016年本屋大賞に輝いた小説を実写映画化した作品です。
◆森と水の音
この映画には「森と水の音」が静かに響き続けていました。実際にはピアノ演奏のシーンや主人公が森を歩くシーンでの音響がそう感じさせたのかもしれないけれど、
今、目を閉じて思い浮かべても、感じるのは「森と水の音」。
それは「ずっと探してきた音」に近づいたような、懐かしいを超えて、何か根源的な音に近づいているような、不思議な感覚でした。
遠い昔、二人で「George Winston」を聴いた頃も、探していたのは「森と水の音」だったような気がします。そして、この映画を見て「森と水の音」にまた近づけたような気がしました。
◆明治神宮を歩こう
映画を観終わった翌日、どこかに出かけようと相談していた時、主人がふと「明治神宮を歩こう」と言いました。こういう唐突な提案は、これまでもハズレが少なく、今回も何か閃いたのだと思います。
とてもお天気の良い休日だったので、久しぶりに明治神宮を二人でお散歩することになりました。久しぶりに表参道や渋谷までの通りもコースに入れて。
◆明治神宮の森
表参道のキラキラした通りを抜け、明治神宮の森に近づいた時、急にあたりが冷んやりした空気に包まれ、何かここから先は異なる世界だという感覚がありました。
南門をくぐると、高く覆いかぶさるように巨木の緑が生い茂り、広い参道だけれども森の中を歩いている、森の中にいる、そう感じさせるものがありました。
けれど、参道の途中にある「明治神宮御苑」に入り、地面の落ち葉を踏みしめ、木々の根元に茂る熊笹や、水滴が感じられるほど湿った木の幹に囲まれると、今度こそ本当に森の奥深くに分け入ったようでした。
◆森と水の音が聴こえる
睡蓮の咲く南池、花菖蒲田を抜け、更に森の奥へ歩いて言った時、ふと、
「この森には音が響いている」「森と水の音」が聴こえる。突然、そんな風に感じました。それは『羊と鋼の森』の映画と同じ感覚でした。
実際に音が聴こえるわけではなく、それはまるで自分の中に響いている「森と水の音」に共鳴しているような、そういう何かを感じたのです。
下調べしないで出かけたので全く知らなかったのですが、その奥には、清正井(きよまさのいど)がありました。森の地下水による湧き水の井戸です。
◆森が美しいのは井戸を隠してるから
「ここに湧き水があるから、森と水の音を感じたのか・・・」と納得しました。
静かに湧き出る井戸の、透明にゆれる水面に手を浸し、心まで透明になるような気持ちで森の道を引き返していると、ある言葉を思い出しました。
「砂漠が美しいのは、
どこかに井戸を隠しているからだよ」
『星の王子さま』
(サン・テグジュペリ)
「この森が美しいのは、森の奥に井戸を隠しているからなんだね」そんなことを話しながら、森の道を歩きました。
◆永遠の森
南門を出て「杜のテラス」でお茶をしながら、
「よくこんな森が残せたよね、都会の真ん中に・・・」と話しつつ、二人とも「いや待てよ、この森は自然な森だっけ?」と「明治神宮 森の設計」で検索してみると、
「神社の森は永遠に続くものでなければならない。それには自然林に近い状態をつくり上げることだ」という基本骨子のもと、今から90 年ほど前に、当時の日本の人々が、明確なデザイン意図と壮大な構想力をもってつくり上げた森であることが判明しました。
参考)日本人がつくった自然の森――明治神宮「鎮守の杜に響く永遠の祈り」
日本発の林学博士、公園の父と呼ばれる本多静六。その弟子の本郷高徳と上原敬二。林苑計画書を作ったのは、この3人。彼らが目指したのは、永遠の森。元々この地にあった太古の原生林だったそうです。
◆本多静六氏の設計
「本多静六」のお名前発見にびっくり。本多静六氏は、私のブログでもサイトでも紹介している方です。
確かに当時の名だたる公園を設計していた「公園の父」であり、日本発の林学博士である本多静六氏が、この明治神宮の森を設計するのは自然な流れだったのでしょう。
でも私としては、こんなに素晴らしい豊かな森が、自然林ではなく人工林であり、しかも、よく存じ上げている本多静六氏の設計であったということに、衝撃を受けていました。
日比谷公園のような明るく開けた公園だけでなく、100年後さらに永遠に続く奥深い静かな森を設計してしまう本多静六氏の仕事に、深く感銘を受けました。
◆永遠を感じさせる音
映画『羊と鋼の森』で感じた「森と水の音」は、明治神宮の森につながっていました。その森は「永遠の森」として設計されていました。「永遠の祈り」は森の中に今も響いています。
私の中にある「森と水の音」も「永遠」を感じさせる音だ・・・でも、私の中に響く音は、永遠を感じさせるほど遠い昔に聴いたことのある音だ・・・そんなことに気づかされました。
映画で、森で、内にある「森と水の音」が共鳴し、生きた音として響き渡ったようでした。またどこかで「森と水の音」に共鳴する音に出会ったら、さらに深い発見があるかもしれない・・・そんな日を楽しみにしていようと思います。
関連ニュース
●天皇皇后両陛下が『羊と鋼の森』をご鑑賞。山崎賢人「とても緊張しました」
会見に現れた山崎はまだ緊張が解けない様子で、硬い表情。「皇后陛下とお話をさせていただいて『とてもよい、美しい映画でした』と言っていただいた」と懇談を振り返り、「皇后陛下は原作の小説も読まれていたので、『その外村のイメージにぴったりだった』と言ってもらえてすごくうれしかったです」とようやく笑顔を見せた。
2018年5月24日 livedoorNEWS
関連動画
●映画『羊と鋼の森』が608倍感動できる(もう一度観たくなる)公開記念特別番組
関連書籍
書名:羊と鋼の森
著者:宮下 奈都
出版社:文春文庫
発行日:2018/2/9
紹介文:
第13回本屋大賞、第4回ブランチブックアワード大賞2015、第13回キノベス!2016 第1位……伝説の三冠を達成!日本中の読者の心を震わせた小説、いよいよ文庫化!
明治神宮鎮座百年祭
2020年11月1日
2020年11月1日、主人がふと「明治神宮に行こう」と言いました。こういう唐突な提案は、これまでもハズレが少なく、今回も何か閃いたのだと思います。
当初はいつも通り、参道〜御苑〜清正井をめぐり本殿を参拝して帰る予定でした。ところが本殿へ向かう南神門の両側に、見たことのない金銀の鳳凰(ほうおう)を発見。
金銀の鳳凰は、現代アーティスト名和晃平氏の作品「鳳 / 凰(Ho / Oh)で、2020年11月3日まで飾られるそうです。参道ではひときわ目を引く神々しい白鹿が気になっていたのですが、こちらも名和晃平氏のもう一つの作品「White Deer」なのだそうです。(参照:デザインとアートのはなし ― 明治神宮の門を飾る名和晃平の金銀の鳳凰「Ho / Oh」)
さらに提灯には「明治神宮百年祭令和2年11月1日」の文字。また右手には「奉納鎮座百年祭記念JAむさし丸」と説明された大きな野菜の船。私たちは、そこで初めて、大正9年11月1日鎮座からちょうど100年の記念日「明治神宮百年祭」当日だと気付いたのです。
すると南神門から装束の行列が。調べてみると、宮中に伝わる「東遊(あずまあそび)」の舞を奉納を終えた後の行列でした。さらに、門をくぐり参拝場所の中央通路からは、巫女4人が初めて披露したと言われる「常久の舞」を、遠くから一部眺めることができました。
歴史的な日に巡り会えた幸運に喜びながら長蛇の列に並び、御朱印を頂きました。御朱印の半紙には「鎮座百年祭記念」「令和二年十一月一日」の文字が書かれていました。
参道のパネルでも説明されていますが、明治神宮建設を希望する国民の声は東京から全国に広がり、日本全国から10万本の献木をうけ明治神宮100年の杜が創られたそうです。
このような多くの人々の願いによって生まれた明治神宮は、今でも多くの人々の祈りを感じる場所です。さらに記念すべ100年目の節目に参拝し、過去と未来を含むさらに多くの人々と共に祈っているという気持ちになりました。
2020年11月2日 inner-wish
明治神宮鎮座百年祭2020年とは
明治天皇と昭憲皇太后を御祭神とする。境内はそのほとんどが全国青年団の勤労奉仕により造苑整備されたもので、現在の深い杜の木々は全国よりの献木が植樹された。
1912年(明治45年)に明治天皇が崩御し、立憲君主国家としては初の君主の大葬であったがその死に関する法律はなく、何らかの記念(紀念とも)するための行事が計画される。神宮建設の機運の高まりを受け、1913年(大正2年)に政府は閣議によって原敬内務大臣を長とする神社奉祀調査会を設置した。
1914年(大正3年)に皇后であった昭憲皇太后が崩御すると、大正天皇の裁可を受けて、1915年(大正4年)5月1日、官幣大社明治神宮を創建することが内務省告示で発表された。
造営には全国から11,129人もの国民が労力奉仕に自発的に参加した。鎮座祭は1920年(大正9年)11月1日に行われ、翌2日には大正天皇の名代として皇太子裕仁親王(のちの昭和天皇)が行啓した。
関連DVD
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明治神宮に封印された100年の秘密!天才林学者たちが作り出した"不思議の森"とは?よみがえる明治神宮創建の大プロジェクト。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。
愛と光と感謝をこめて
インナーウィッシュ
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日本発の林学博士、公園の父と呼ばれる本多静六氏の書籍に書かれていた「夫婦が一つになる」という表現。20年以上前に読んだ本にも書かれていた覚えがあるのですが、その当時は20代で新婚だったので「遠い未来にはそんなことも起こるのかなあ」とぼんやり感じたものです。詳しくはコチラ>