苦しみの原因を心の中からも取り除き、未来永劫にわたる幸福と、日々増大し続ける内なる力を育てることができますように。
「十不善業」は「苦しみの原因」であるため、「心の中からも取り除く」ということが仏教の初歩として説かれています。
①殺生
他者の命を奪うこと。人を殺すこと~小さな虫を殺すことまで。自分が嫌悪している相手や、敵意をもっている者を恨みの感情で殺すこと。
②盗み
貴重で高価な物から、盗るに足りない物まで、物を盗むこと。
③邪淫
自分の妻や夫以外の人と深く交わること。
④嘘(忘語)
他者をだますこと。見たり聞いたりしているのに、見ていない聞いていないということや、自分が本当に思っていることを交えて話したり、わざと誤ったことを言うこと。
⑤仲たがいをさせる(両舌)
人と人の間に入って、その人間関係を悪くさせること。言葉によって人間関係を壊すこと。お互いが相手を嫌悪し、敵対関係に発展させること。
⑥粗語
粗暴な言葉や悪い言葉を発すること。軽蔑差、差別、意地悪と思われるような言葉、「馬鹿!」など怒りの感情で発する言葉。「おまえは」など相手を軽蔑するような言葉。
⑦おしゃべり(綺語)
無意味な話をして時間をつぶすこと。執着や怒りが増す話をすること。執着や怒りで気持ちがおさまらない時にする話。
⑧羨望
うらやましがること。他者の所有物や環境的なことをうらやましがること。
⑨悪意
害を与えようと思うこと。害を与えようとする考え。荒れた感情で他者を傷つけようとしたり、邪魔をして落とし入れようとすること。
⑩邪見
前世や来世はなく、因果関係の業はないという誤った見方。三宝(仏・法・僧)はないと見ること。あることをないと見たり、ないことをあるという、まちがったものの見方を邪見という。
十不善業を捨てる【自己変容の道】より
あらゆる苦しみを私たちにもたらす煩悩は十二支縁起で説かれているものです。煩悩のうちでもっとも根本的なものは「無知」(無明)つまり、対象をなにものからも自立した存在として捉える働き、であります。
無知の力は下記の諸煩悩を引き起こします。
「貪り」(貪・とん)
「怒り」(瞋・じん)
「傲慢」(慢・まん)
「憎悪」(恨・こん)
「疑い深い心」(疑・ぎ)
「妬み」(嫉・ち)
それらは実際に苦を生み出すもので、私たちの今の世界に満ち溢れている問題や危機を分析してみると、家族レヴェルであれ国家レヴェルであれ、それが私たちの怒りや妬みや執着に関係していることは明らかです。
真の標的、ないし戦場は私たちの心のなかにあると考えなければなりません。時間はかかりますが、災いをもたらす心の性質を最小限に押さえるための唯一の方法なのです。
実際、いったん正しく心が開発されたならば、心の持っている良い性質はついに無限に増大していくのです。それゆえ精神の修養は、未来永劫にわたる幸福と、日々増大し続ける内なる力の両方をもたらしてくれるのです。
『ダライ・ラマの仏教入門』
ダライ・ラマ十四世 テンジン・ギャムツォ/著より